> まず、人は危険な行為でもいったん始めるとリスクを過小評価する傾向が >あり、集団になるとその傾向が強まる。また、専門的知識を持つ者がリスク >を知っていても、専門性の低い者にリスクが伝わりにくいと感じれば伝える >ことすら怠る傾向がある。さらに、一度危険な作業を始めた集団では、疑問 >を感じる者があっても「効率」の前に声を上げてはならないという心理的圧 >力を受け、すべての集団成員が危険な行動をとる同調行動が起きる。 一字一句、臨界事故のケースに当てはまっている。 > このような集団の心理過程を分析した予防策でない限り次の組織事故を防 >ぐことはできないだろう。こうまではっきりと断言されると、「組織事故」の予防策策定に際し、心理学のご専門の方々のお知恵を拝借せねばなるまい。
> さらに、万全の事故予防対策をとっても人間の想像を超えた事故が起こる >ことがある。そのために事故発生時の対策が必要である。なるほど、いくら偉い心理学者でも「万全の事故予防対策」はないということだろう。そこでもう一つ、事故が「起こってしまったときの対策」も必要になる。「予防対策が万全というなら、事故が起こってしまったらどうするのか、なんて考えること事態、無駄じゃないか」という無謀な意見に押されてか、「起こってしまったときの対策」は確かに不十分だった。
> 緊急時の避難や被害拡大防止の意思決定を行う責任者は、パニックやリー >ダーシップに関する社会心理学の研究成果を学ぶ必要がある。被害者の心理 >面への配慮、事故を起こした職員の教育と心理的ケアなどについては、臨床 >心理学や教育心理学の知見や実践が役立つはずである。産業界では、心理学 >は現場の生産性向上や個人のエラー防止に利用されてきたが、組織全体の安 >全対策については十分に活用されていない。臨界事故の時もそうだったが、各組織・団体はこぞって「事故対策本部」を設置し、その本部長にはそれぞれの長が就任している。政府の「事故対策本部」の本部長はたしか小渕総理だったと記憶している。ところがその本部長の資格には社会心理学のバックグランドが必要と山内先生はおっしゃっているのだ。当然であろう。そういうことも考慮に入れないで、だれかれとなく時の長を事故対策本部長に座らせていいはずはない。
> 心理学では、事故への対応によって組織を、危険に目をつぶり事故を隠す >「病的組織」、事故発生後もその場限りの手当てで済ます「場当たり的組 >織」、次の事故を防ぐ契機として抜本的改善策を講じる「生産的組織」に分 >類している。われわれが所属している原子力業界が「病的組織」といった不名誉な称号をいただく前に(もうすでにいただいているのかも知れないが・・・)、是が非でも「次の事故を防ぐ契機として抜本的改善策を講じ」なければならない。
> 事故予防には一度で効く特効薬はない。どのような安全な組織を作っても、 >安全を求める努力を怠るとすぐに安全でない組織になる。組織の潜在的な危 >険を絶えず探し、危険を避けるための具体策を講じる絶え間ない活動だけが >安全を得る方法である。そして、いずれの業界でも望ましいのは「生産的組 >織」である。「安全文化」を浸透させるためにも絶え間ない活動を続けなければならないということであろう。これは、「言うは易し」で、実行するにはなかなか難しい問題である。あるが、原子力を続ける限り、われわれはやらなければならない。
> 日本が今後も科学立国・技術立国を国是とするならば「組織の安全」を緊 >急の国家課題とすべきである。臨界事故については、世界中が国の事故調査 >と改善がどのように行われるか注目している。当然である。そして、臨界事故に関して世界中の人々がわれわれを注目していることは痛いほど感じている。
山内先生、貴重なご意見、有り難うございました。いずれわれわれの仲間が参上のうえ、もう少し詳細かつ具体的にご教示いただくことになろうかと思います。その時にはどうぞよろしくお願い申し上げます。
「G研」代表