
街中で2時間ほど停電になると、道路の信号が止まって交通渋滞になり、銀行の現金自動預入払出機(ATM)も使えなくなり、自家発電装置をもっていない病院での医療活動もストップせざるを得ない、スーパーの冷凍食品もダメージが出始める・・・、停電は昼間でもこういった影響が考えられる。
想像の話ではなく、現実にアメリカはカリフォルニア州で、1月17日から、一地域あたり2時間ほどの停電が輪番で続いているという。同州としては、第二次大戦後、初めての大規模な停電だそうだ。
停電の原因は、明解だ。電力需要に見合った量の電力を発電または調達することができず、供給ができなくなったからである。それも、「ステージ3」が発せられたというから、事態はかなり深刻である。
「ステージ3」とは、供給予備率が1.5%を下回った場合に出される警告で、カリフォルニア州の場合、州内を人口20万人〜50万人程度に分割した地域ごとに順次停電させる方式、つまり輪番停電によって需給ひっ迫を回避させる努力を行っている。
供給予備率とは、供給量に対する供給と需要の差の割合を意味するが、日本の場合、真夏の最も需給がひっ迫する時(ピーク時)の供給予備率を12%程度にして、夏場の需要に備え、発電所の整備をしているのである。
カリフォルニア州の供給予備率が1.5%まで落ちているということは、日本の需給がひっ迫したときの夏場の値と比較しても、相当重症と考えられる。同州のグレイ・デービス知事は、緊急事態宣言を発するに至ったそうである。
そもそも何故このような事態が起こることになったのか、答は簡単である。カリフォルニア州が、世界に先駆けて1995年頃から電力の規制緩和を本格化し、まず発電事業から自由化された。つまり誰でも発電事業ができるようになったのである。既存の電力会社は、これら新規参入の発電事業者からも卸値で電力を購入することになった。
この卸値には上下の枠をはめない自由な市場価格にされたため、乱高下が激しく、どんどん高騰していった。ところが、電力会社が一般家庭などに売る電気料金の自由化は、社会的な影響などに配慮して2002年まで延期されていたのである。
つまり、消費者に直接供給している電力会社は、高い電力を買ってきて安く売ることを余儀なくされてきたのである。これでは、いかなる優秀な経営者でも債務が嵩み、経営難に陥るのは当然ではなかろうか。
まず、カリフォルニア州第2位の電力会社「サザン・カリフォルニア・エジソン」(SCE)がこの1月16日、卸電力購入費用など合計約6億ドルの支払いを一時停止し、債務不履行を発表した。次いで翌日の17日、今度はカリフォルニア最大の電力会社「パシフィック・ガス・エレクトリック」(PG&E)とその親会社共々、両社合計7600万ドルの支払いを停止して、債務不履行を起こしたことを発表したのである。
今を遡ること15年前、1985年夏、当紙の特派員は、世界から集まったエネルギー専門家たち20人とともに全米各地のエネルギー関連施設を視察するツアーに参加していた。もちろんカリフォルニア州も含まれていた。その時の旅行記から引用してみよう。
「サンフランシスコから小一時間、車で走った所に風力発電所があった。ベイブリッジを通ってオークランド側に渡り、そこから少し北へ行った所である」
「関係者の話によると、そこは全米有数の風力発電の適地だそうだ。小高い丘が幾重にも並び、太平洋から吹きつける風が、その峰々の谷間で狭くなった所を通過する時、風速はグンと高まるのだという」
佐和隆光・京大教授は、「諸外国における電力自由化の主たる狙いの一つは、原発に替わる電力供給源を確保することにある」(1月11日付け読売新聞論点)と述べている。
風力に代表される自然エネルギーの開発や省エネルギー技術の研究でも、15年前の当時から、カリフォルニアはそういった分野のメッカであった。原発に替わるエネルギー源の開発を加速させるため、電力自由化を世界に先駆けて進めたのであろう。
デービス知事は「自由化は完全に失敗だった」と、言下に認めたそうである。