<論>大いに見習うべし  国民から愛された寅さん


 車寅次郎こと俳優の渥美清さんが亡くなり、多くの人々が悲しんだ。日本政府は早速、国民栄誉賞を授与すると発表した。また、テレビや週刊誌などでは「寅さん」の特番や特集が組まれ、「寅さん」を忍ぶと供に、映画「男はつらいよ」シリーズの主人公「寅さん」やそれを演じてきた「渥美清」という俳優が何故こうまで国民から愛されてきたのか――色々な人達のコメントを紹介している。

 義理人情に厚く偉そぶったところが少しもない俳優さんだったから、みんなが憧れる気楽な人生を歩みながらすぐに純情な恋をするような「寅さん」だったから、といったところが大方の分析結果のようだ。

 「週刊読売」9月1日号に寄稿している評論家・芹沢俊介氏の「寅さんに見る失われた原日本人」の中の一文をぜひ紹介したい。

「なぜ寅さんは日本人にこれほど愛されたのだろうか?たぶん寅さんが家族の厄介者だったからである。身近にいるとトラブル・メーカーで困るけれど、いなくなってしまうと寂しい、そういう喪失感情をかきたてる存在だったからである」

 この一文を読んで、どこかで聞いた話しに似ているなあ、と思ったのである。

「自分の住む町に建てられるのは困るが、どこか遠くに建てるならかまわない。完全にこの世からなくしてしまって停電になるのはもっと困る」

 そう、原子力発電所の建設を巡る大方の日本人の感情に似ているといいたいのである。原発と比較されるのは、渥美清さんにとって大いに不満であろうが、もう少し天国から見守っていてほしい。

 身近にいてしょっちゅうトラブルを起こす寅さんは、家族からも近所からも厄介者と思われていた半面、みなから愛情に包まれていた。それに、寅さんの家族は、無類のお人好しで、正直そのもので、近所からもファンからも信頼を得ていた。ここのところは、原子力発電所と大きな違いである。