<論> 安全行政の人的強化  美浜原発事故の教訓から


 昨年(04年)8月、美浜原子力発電所3号機で、2次系冷却水の配管が破裂し、高温の蒸気が噴出、そこに居合わせた作業員11人が火傷を負い、うち5人が死亡するという事故が起こった。

 日本の原子力発電所で起こった最悪の事故として、電力会社、原子炉メーカー、それに安全行政は、事故の原因追究と今後の対策を検討してきた。その最終報告書がようやくまとまり、3月14日、福井市で開かれた事故調査委員会で報告されたという。

 新聞報道などによると、その最終報告に書かれた事故の原因は、電力会社の保守点検や品質保証の体制に問題があったとしている。また、経済性を優先するあまり安全が手薄になるという電力業界のモラルの低下も指摘している。

 発電所を保有し、管理運転している電力会社に事故の第一の責任があることに異論はない。また、その発電所を設計し設置した後、保守点検に注意を図らなければならない原子炉メーカーにも責任の一端はある。

 しかし、安全行政側の責任の所在を明確にした記述は、経済産業省の原子力安全・保安院がまとめた最終報告書になさそうである。

 以前この欄で、三菱自動車の欠陥車隠しの件で、「国の安全行政は、業者からの報告書が上がってくるのを待ち、書類に不備がないかのみチェックしているのでは、到底国民の安全など守れるはずがない」と指摘した。

 原子力安全・保安院の審査官や検査官に十分な能力が備わっているなら、電力会社や原子炉メーカーなどの技術者達と十二分に渡り合え、国民が安心できるまで原子力の安全文化の熟成に監視指導できるはずだ。

 今回の事故で最大の問題点は、点検が必要な個所のリスト漏れが上げられる。原子炉メーカーが作成する最初のリストからも漏れ、電力のチェック段階でも漏れたことから、電力のチェック体制の欠陥が指摘されている。

 毎年行われる定期検査の計画書が電力会社から保安院に提出され、その許可を得て定期検査開始となる。その計画書の中に点検項目も含まれるから、重要な点検項目が漏れていたのなら、保安院のチェック体制にも不備があったと反省するべきではないのだろうか。

 保安院の権限の拡大は、作業の遅延をもたらすから、行政のチェックは形式だけでいいのだ、という意見もあるようだが、国民を安心させるに値する安全点検に、民間企業のモラルだけでは、如何にも不十分である。

 民間企業を定年退職したベテラン技術者たちを集め、保安院の審査官、検査官に任官してもらえば、安全行政の強化につながる。