アメリカの大リーグに今シーズンから行ったイチロー(鈴木一朗)が大活躍しており、その中継やニュースを見るのが楽しみだ。7月に開かれるオールスターゲームにも、ファン投票一位で選ばれる可能性があると、中間集計でも報じられている。いまやイチローは日米野球界のスーパースターになった。
一方、日本のプロ野球はといえば、人気はがた落ちしているという。伝統の巨人・阪神戦でも、球場の観客席に空きが見られるというし、テレビの実況中継でもその視聴率はずいぶん下がっているという。
球界の盟主と自認する読売巨人軍は、他のチームの4番バッターやエース級のピッチャー、それに外人助っ人を、金の力にモノを言わせて獲得し、「常勝」を狙っている。しかし、今季は投手陣の不調もあって調子はいま一つである。
ジャイアンツの調子がスカーっとしないと球界全体がよけい落ち込んでいるように見える。「読売巨人軍は永久に不滅です」といったのは何処のどなたでしたっけ?と、八つ当たりしたくなるものだ。
海の向こうのイチローの大活躍を見るにつけ、また、来年に迫ったワールドカップ日本開催でますます勢いを増してきたサッカーの人気に接するにつけ、凋落のジャイアンツ、凋落の日本プロ野球が、このところやけに目につくようになっている。
この「凋落の日本プロ野球界」にオーバーラップして目に映るのは、エネルギー界の盟主を自認してきた原子力界である。
創立20周年を迎えた「エネルギーと暮らし・市民の会」は、「環境の保全」「エネルギーの生産」「エネルギー・資源の節約」という三要素が調和したエネルギー需給戦略を推進してきた。
有限の地球資源を使いきるのではなく、これからは自分たちでエネルギーもつくり出す努力こそ大切として、現在、人類がつくり出したエネルギーの最右翼に位置する原子力を推進する立場をとってきた。
ところが、その押してきた原子力界の最近の凋落ぶりは、もうがく然とするばかりである。いくら逆風に見舞われているからといって、自ら凋落ぶりを世間に晒すことはない。
高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れやアスファルト固化施設の火災を起こしたときの虚為の報告や報告漏れが、世間から厳しく追求された。使用済み燃料の輸送用キャスクの製造工程におけるデータのねつ造、MOX燃料加工時のデータねつ造なども、原子力界は未然に見抜くことはできなかった。
そして今度は、日本原子力学会の2600万円におよぶ横領疑惑事件である。
「安全性はダブルチェックで万全を期しています」と繰り返し説明しても、もう国民は信用しないだろう。いや、信用したくてもできないように仕向けたのは、誰でもない、原子力界なのだ。「驕(おご)れる者久しからず」といったではないか。平家やジャイアンツのように、いつまでも盟主を自認しているようでは墓穴を自ら掘る羽目になろう。
イチローのようなスーパースターの助っ人を望んでも詮無いことである。原子力委員や安全委員らが自ら、あらゆる機会を捉えて、国民に直接話しかけるべきだ。それしか凋落しかけた原子力界が再び国民の信頼を取り戻す方法はない。
ここで勘違いしてもらっては困るが、国民の大多数は、地球にも優しく安定して供給が可能な原子力の技術を信用していないわけではない。その技術の利用に仕えている人間、すなわち原子力界の人達を信用していないのである。しっかり認識してもらいたい。
そして、人類にとって必要かつ不可欠な原子力技術の運用の重責を任されているのだ、と自信をもって邁進してもらいたい。