今年3月から、日本でも大口需要家向け電力の小売り自由化が開始された。そして、8月10日、この電力自由化の推進行政府である通商産業省が、本省ビル電力調達の競争入札を行った。それまで供給してきた東京電力が負け、電力ビジネスに新規参入したばかりの三菱商事の子会社「ダイヤモンドパワー」が落札に成功した。
大方のマスコミは、「既存の電力会社による中央官庁への独占供給体制に風穴を開けた意義は大きい」(読売、8月17日)などと概ね歓迎の意を表明している。しかし、果たしてそうだろうか。
そもそもこの電力の自由化の発想は、電力の販売にも競争原理を導入して、少しでも安い電力を供給し、日本経済に反映させる狙いからだった。電気料金を格段に下げるには、やはり自由経済の基本−−競争原理を導入しなければならない、という論理であった。
この自由化による競争原理の導入は、それによって本当に価格が下がれば、消費者にとっては好ましい制度だが、「無益な競争」だってあるのだから、必ずしも好ましい方向に向かうとは限らない、と指摘する専門家も少なからずいた。
電力の自由化は、ドイツやイギリス、アメリカなどの先進国が、日本に先立って導入していたから、世界の趨勢でもあり、日本もいずれ検討せねばならない時期に来ていたことは確かだ。しかし、エネルギーは、それぞれの国の事情−−例えばエネルギー資源の有無などによって、その国の需給戦略が立てられるものだから、外国に見習ってばかりいても事がうまく運ぶものではない。
こういった懸念をまさしく現実のものとする記事が、通産省の電力調達の入札が行われた日のわずか二日前の8月8日、その日の「日本経済新聞」朝刊に掲載された。「米で電力不足懸念」「競争激化で各社投資抑制、発電所新設進まず」という見出し。
記事の前文には、「米国で電力不足の懸念が強まっている。長引く好況や猛暑で需要が急増する半面、規制緩和による競争激化で電力会社が投資負担の膨らむ発電所の新設を控えているためだ」と、はっきり電力不足気味の原因を分析している。また、「全米で初めて電力小売りを自由化したカリフォルニア州では、需要増に供給が追いつかず一般世帯向けの電力料金が急騰している」と、自由化の思惑が、実施後わずか2年足らずで逆行している実例を報じているのだ。
電力の自由化、再検討の余地ありか?