政府は、2年前の1998年に出した「長期エネルギー需給見通し」と一般に呼ばれている、わが国のエネルギー政策を総合的に見直すと発表した。「2年」を「長期」と呼べるのか疑問だが、それも「致し方ない重大な事情」が出現したからであろう。
その「致し方ない事情」の一つは、景気低迷でエネルギーの需要が当初の予想を下回っていることだ。需要が下がっているのに計画通り供給を進めるわけにはいかない。特に電気は貯蔵が不可能に近いから生産過剰は御法度である。
事情の二つ目は、原子力発電所の建設が計画通り進まなくなっていること。地球温暖化ガス排出量削減のためにも原子力発電は重要と考えられ、2010年度までに20基相当を新規に建設する計画であった。ところが、燃料加工工場の臨界事故、MOX燃料の製造段階でのデータ改ざん事件など相次ぐ不祥事で、原子力業界に対する世間の信頼はいまや最悪の状態になった。
事情の三つ目は、原油価格の急騰とアラビア石油の権益更新交渉が成功しなかったことにより、石油確保の見通しが暗くなってきたことである。
こういった事情を踏まえて、総合エネルギー調査会が中心となり、見直し作業が行われる。そして約1年後、改正された「長期エネルギー需給見通し」が出てくる予定である。
見直しが検討される最重点テーマは、原子力発電所の基数を減らしても地球温暖化ガス排出量削減目標は大丈夫かということらしい。
地球温暖化防止のための京都会議(COP3)で、日本は2010年までに、1990年比で6%の温暖化ガス削減を世界に約束した。よって、温暖化ガスを排出しない原子力に過度の期待が寄せられていたのである。それが2010年に20基相当となったのである。
そこで今回の見直しでは、原子力開発の厳しい現状に見合った妥当な目標にするとしている。地元の了解が無理なく得られる原子力立地は何カ所くらいか、といった調査検討がなされるのであろう。
しかし、議論の本筋はあくまでも「原子力発電所を減らしていっても本当に大丈夫か」という課題に重点をおくべきだろう。この議論を正面から展開して行き、とことん煮詰めれば、わが国のエネルギー供給と地球温暖化の両面にわたって原子力の位置づけが明確になってこよう。
もちろん新エネルギーの開発目標も、省エネルギーも、すべてが可能な限り現状に見合った妥当な線を引かない限り、「長期エネルギー需給見通し」はまたしても「絵に描いた餅」になってしまうことは火を見るより明らかである。
また、そういった議論は、専門家委員の審議会に任せておくのではなく、国会にも衆参両院にエネルギー政策常任委員会を設置して、徹底した議論を展開していただきたい。
そうして出来上がった「長期エネルギー需給見通し」こそ、名実共にわが国のエネルギー政策である。よって、そこに銘記された目標に向かって産業界と政界とが一致協力して国民に理解を深める努力をしてもらいたい。とくに原子力立地の地元受入を求める活動においては、政治家の役割は大である。
従来の「見通し」は、「実現不可能な目標」という評価をする人が、政策策定当事者の中にもいたようである。これでは何のための「長期」政策だろうか。どうせ2年もすれば見直すのだろう、という評価だけは拭い去りたいものである。
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