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原子力発電は、タバコのフィルター1個分くらいの大きさの燃料で1軒の家庭が1年間に必要な電気を生み出すことができます。原子力発電で使われる燃料は、石油や石炭、LNG(液化天然ガス)などの化石燃料と違い、燃やした後も再処理をすると再び燃料として利用できます。
さらに、最近、国際的にも大きな関心を集めている大気の温暖化や酸性雨など、化石燃料を燃焼させる場合と異なり、それらの原因となる二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)を放出しないという大きな利点を持っています。
このように私たちのくらしに役立っている原子力施設もやがてその役目を終え、引退の時を迎えます。
使命を終えた原子力施設は、運転を止めたあと、「廃止措置」を行います。これを「デコミッショニング」といいます。デコミッショニングとは「役目を解く」という意味です。
原子力施設が、一般の施設と異なっているのは、施設内に放射性物質が残っていることです。
原子力利用にとって、気をつけなければならない大切なことがあります。それは、原子力施設で働く人々や、施設の周囲の環境そして一般の人たちへの放射線の影響を問題のない小さなものにすること。そして放射性廃棄物の発生をできる限り減らすことです。
そこで日本原子力研究所(原研)、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)、(財)原子力施設デコミッショニング研究協会等で技術開発が進められています。この技術開発には、多くの専門の研究者が参加しています。

出典:科学技術庁「原子力施設のデコミッショニング」
商業原発 初の「廃炉」
注目される廃棄物処理
日本の商業原発として32年間、営業運転を続けてきた日本原子力発電(日本原電)の東海発電所(茨城県東海村)が3月31日、運転を停止した。施設は今後15〜20年かけて解体・撤去される。国内では、これまで研究炉の解体例はあるが、商業炉の廃止措置は初めて。10年以内に運転年数が30年を超える商業炉は国内に10基以上あることから、解体や放射性廃棄物の処理などの先駆例として注目される。
東海発電所には「日本の発電用原子炉のパイオニア号」として昭和41年7月に稼働を始め、これまでの総発電量は約290億キロワット時に達する。
ただ、冷却材に炭酸ガスを用いる国内唯一の黒鉛減速ガス冷却炉のため、規模の割に出力が小さく、部品も特注品となるため発電コストが軽水炉の2倍近くかかるなど、経済効率が悪いことから、昨年6月、廃炉が決まった。
最後の稼働日となった31日には、午後1時半から出力降下を始め、2基あるタービン発電機のうち1号タービンは同2時30分に、2号タービンは同3時に回転を停止した。同3時半、東海村や茨城県など地元関係者らが見守る中、制御室の運転員の手で燃料棒に98本ある制御棒のうち最後の1本を挿入するスイッチが押され、32年間にわたる運転が停止した。
今後は、15〜20年をかけた一連の「廃止措置」作業が始まる。まず、5月から使用済み燃料棒の取り出し作業が始まる。3〜4年かけて英国の再処理工場に搬出、その後、原子炉と建屋は放射能レベルの低下する5〜10年そのまま保管され、その後原子炉の解体撤去作業が始まる。この作業にも5〜10年かかる見込み。総費用は約250億円。
解体では、総量16万トンに及ぶ廃棄物のうち3000トンとされる高レベル放射性廃棄物の処理が注目されるが、現在、国で検討整備が進められている段階だ。
東海発電所が31日停止し、本格的な「廃炉時代」を迎えた。しかし、電力各社は「経済性がネックだった東海発電所とは異なる」として、現段階では具体的に廃炉を検討している発電所はなく、既存炉の“延命”を図ろうとしている。国内に53基ある発電炉、東海発電所に続いて年数がたっているのは東京電力の福島第一原発1号機や日本原電の敦賀原発1号機、関西電力の美浜原発1号機。いずれも昭和40年代後半の運転開始から四半世紀を超える。
国の高経年化対策検討会が平成8年、「基本的に現状の保守・点検を継続することで運転開始から60年間は健全性が確保できるとの判断を示しているが、その一方で東電は昨年から福島第一3号機で長期使用策を実施している。
通産省の長期エネルギー需給見通しによると、平成22年の原子力発電の規模は、昨年末の約1.6倍となる7050万キロワット。これには今後20基程度の増設が必要だが、電力業界は「半分の10基もできれば…」。新規立地が困難なことや、高速増殖炉実用化の見通しが立たないことなどから、廃炉の方針を打ち出しにくい事情があるためだ。
(産経新聞 1998.04.01)