ガラス固化実証の段階

核分裂生成物を抽出した「高レベル廃棄物」


 「低レベル放射性廃棄物」としてドラム缶に詰められ処理される「もの」とは、一言でいえば、放射線管理区域で使われたものは、燃料関係をのぞいてすべて、ということになる。以前は、廃棄物の放射線汚染度に関わらず、管理区域から出るものは、すべて「低レベル廃棄物」となっていた。それは、安全面で疑問があるからというのではなく、心理的安心感のため、という発想からだろうと思われる。

 しかし今日では、管理区域から出るものはすべて測定し、放射能に汚染されたものと、ほとんど汚染されてないものとに分類し、前者を「低レベル放射性廃棄物」に、後者を「一般産業廃棄物」として処理されている。

 原子力発電所などから排出される「低レベル放射性廃棄物」には、作業衣等の洗濯排水、換気扇等のフィルター、冷却水のろ過フィルター、原子炉内の取り替え機器等々と、あらゆる種類のものが含まれる。それらは、原子炉内で放射線を浴び、放射化されたか、放射化された放射性物質が付着して放射性物質になったか、のいずれかである。

 一方の「高レベル放射性廃棄物」の方は、ウランなどの原子核が中性子を吸収して、全く違った2種類の原子核に分裂してできた「核分裂生成物」が主成分である。つまり、使用済み燃料を再処理してはじめて「高レベル放射性廃棄物」は存在するのである。

 原子力発電所から出る使用済み燃料は、再処理工場に運ばれ、燃え残りのウランとプルトニウムを回収するとともに、核分裂生成物と、わずかにある超ウラン元素(ウランの原子番号92より大きな原子番号を持った元素)の混ざった廃液を「高レベル放射性廃棄物」として分離する。

 核分裂生成物や超ウラン元素は、放射能レベルが高く、また半減期(放射能レベルが半分に落ちるまでの時間で、それぞれの同位元素によって、秒単位のものから数万年もの長いものまでまちまち)も、とりわけ長いものが含まれるから、その取扱いには十分注意を払わなければならない、と規定されている。

 高レベル放射性廃液は、化学的な耐久性、耐放射線性、耐熱性に富んだ「ほうけい酸ガラス」で固めて処理する。「ガラス固化」処理は、@廃液の脱硝・濃縮、Aガラス溶融、B溶融ガラスの容器(キャニスター)封入、C冷却固化、の順で行われる。

 この処理技術は、日本を始め世界各国でも積極的に開発をすすめているが、ガラス固化以外にも、セラミック固化、シンロック(合成岩)固化などの研究も進められている。また、廃液の中から長寿命の放射性元素のみを分離抽出する方法も研究されている。

 ガラス固化された「高レベル放射性廃棄物」は、地質的にも安定した地層の地下深くに何十もの工学的なバリアを施した保管庫に貯蔵管理する必要がある。いまその実証試験が、岩手県釜石鉱山などの岩盤の中で、大々的にすすめられている。

(水口 哲)