薪を10本燃やしたあとの灰をかきわけると、その中から14本の新しい薪がでてくる――こんな打出の小槌の様なボイラーがあれば、21世紀のエネルギーも安泰といえまいか。
原子炉の一種、「高速増殖炉」がこの打出の小槌の原理を踏まえて設計されているのである。つまり、高速増殖炉の燃料、プルトニウム-239(Pu-239)を燃やしてのち取り出して再処理してみると、最初のPu-239の量以上のPu-239が、消費されると同時に同じ炉の中で生産されていたのである。
そのからくりはこうである。プルトニウムは、元々天然にはほとんど存在せず、天然に存在するウラン-238(U-238)が中性子を吸収してU-239になり、それが24分の半減期でネプチニウム-239(Np-239)になる。それから56時間の半減期でPu-239となる。このように半ば人工的に作られた原子核、それがPu-239ということになる。
Pu-239は、U-235と同じように核分裂を起こす原子核で、原子炉の燃料になり得る。しかしPu-239は、速度の遅い中性子(熱中性子)としか核分裂を起こさないU-235と違い、核分裂から飛び出したままの速い中性子(高速中性子)とも十分に核分裂を起こすことができる。また、U-238に吸収される中性子も、高速中性子の方が熱中性子より効率よく吸収される。だからPu-239を燃料とした核分裂にも、U-238を原料としたPu-239の生産にも、高速中性子を使って核反応を起こすよう原子炉自体が設計されている。
高速増殖炉の「高速」とは「高速中性子」のことであり、現在の発電用原子炉のように高速中性子を熱中性子にまで速度を落とすための減速材は、したがって不要である。
高速増殖炉のもう一つの役割――Pu-239の生産性を高める、つまり増殖率を上げる工夫が、設計の段階から施されている。
1回の核分裂から2〜3個の中性子が飛び出してくるが、この内連鎖的に核分裂を起こさせるには1個の中性子で十分である。あとの1〜2個の中性子ができるだけU-238に吸収されるように設計すれば、増殖率を上げることができるのである。
軽水炉で燃料が装荷されている部分、つまり「炉心」の形状は、直径と高さがほぼ同じ円筒型であるが、高速増殖炉の「炉心」の形状は、円盤型である。平らな今川焼きを思い浮かべてもらいたい。そのあんこのところを「コア」と呼び、皮の部分を「ブランケット」と呼んでいる。
コアの部分にはPu-239とU-238の混合燃料が詰められており、核分裂連鎖反応を起こして熱を取り出すのは主にここである。ブランケットの部分にはU-238を主体にした燃料を詰め、コアから飛び出してくる中性子をつかまえ、Pu-239の生産を主にやるところである。核分裂に使われる以外の中性子はほとんどU-238に吸収されるように設計されているのが、高速増殖炉である。
(水口 哲)