「放射能」と「放射線」という言葉ほど混同される言葉も少ないだろう。しかし、同じではないが、この二つの言葉は密接な関係にある。通常、「放射線」といわれるのは、放射性同位体(RI)が他の物質へ変わる自然崩壊の時に放出される粒子線、あるいは光なども仲間に入る電磁波である。一方、「放射能」は、RIが放射線を放出する能力、つまりRIという物質の性質をいう。
これらの放射線には、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線の三つがある。α線は高速のヘリウムの原子核で、この自然崩壊をα崩壊といい、α線はウランやラジウムから出てくる。β線は高速の電子の流れで、これがβ崩壊。β線は、コバルト60などから放出される。γ線は、不安定なRIが安定したものになる時に放出される電磁波である。γ線はコバルト60やセシウム137などからも出てくる。
これらの放射線は物質の中を通り抜けるが、その透過力は放射線の種類によって異なっている。γ線は鉛以外大抵の物質を透過するがβ線はアルミニウムの板、α線に至っては、紙一枚も透過しない。
1896年、フランスのA.H.ベクレルがウランから放出されている電磁波を発見した。それが放射線発見の最初とされている。その後、キュリー夫人らがラジウムやポロニウムからも同様の放射線が出ていることを発見している。放射線に透過力の強弱の性質があることが発見され、1899年、E.ラザフォードによって、弱いのをα線、強いのをβ線と名付けられている。その翌年の1900年、フランスのP.ビラールが磁場によっても曲げられない非常に透過力の強い第三の放射線の存在を発見し、γ線と名付けた。
β線が電子線であることは直ちに明らかにされたのであるが、あとの2種類の放射線の正体が明らかにされるのはもう少し先であった。α線は、ラザフォードやガイガー等によって1908年に、γ線は、1914年、同じくラザフォード等によって明らかにされている。
放射線は無色無臭であるから人間の五感によって感知することができず、不気味な存在ととられているが、有害な化学物質の分析などと比較しても、その存在はおろか、その微量な数量や強さまでも、ごく簡単な測定器で知ることができるのである。放射線の測定は、物質との相互作用を利用することによるが、代表的な測定器に、ガイガー・ミューラー計数管、電離箱、シンチレーションカウンターなど、実に多種多様なものがある。
放射線は厄介な代物といった感もなきにしもあらずだが、放射線のもつ性質を有効に利用して、工業や農業、医療などにも広く利用されている。
(水口 哲)