三次元で緻密に設計された原子炉

連鎖反応を制御し、エネルギーを取り出す役割


 アメリカ、イリノイ州にあるシカゴ大学のフットボール場観覧席の下、イタリアから亡命してきたエンリコ・フェルミ博士を中心に原子物理学の精鋭達は、世界最初の原子炉、CP−1が臨界に達するのを固唾を飲んで見守っていた。1942年12月2日のことである。あれからわずか半世紀、世界には400基以上の大型発電用原子炉が稼働している。原子炉の原理は、当時も今も同じである。

 不安定な原子核、つまり核分裂性物質の原子核に中性子が飛び込んでくると、その原子核はますます不安定になり、ついにはほぼ同じ重さの2つの原子核に分裂。物理学でいうところの「核分裂反応」である。分裂と同時に飛び出してくる2〜3個の中性子は別の核分裂性原子核に遭遇して次々と核分裂を引き起こす。いわゆる「連鎖反応」である。

 核分裂連鎖反応を引き起こす物質は、自然界にはU-235だけで、わずか0.73%しか含まれていない、ウランの同位元素である。含有量が大部分のU-238は、同じウランの同位元素でも比較的安定した原子核であり、中性子が飛び込んできても核分裂連鎖反応が起こることはない。このU-238、中性子を吸収する性質があり、原子炉の燃料の中のU-235の割合が低すぎる、つまりU-238が多すぎると連鎖反応は起きない、ということになる。

 原子炉の燃料としてのウラン、U-235の含有量(「濃縮度」と呼んでいる)が多すぎても少なすぎても連鎖反応は続かない。原子炉の構成材料やサイズにもよるが、日本にある発電用原子炉に使われている燃料は、約3%の低濃縮ウランである。ちなみに、原子爆弾に使われるウランは95%以上という高濃縮でなければならない、という。

 原子炉の中に適度に濃縮されたウラン燃料だけがあっても連鎖反応は起こらない。核分裂から飛び出た時の中性子はあまりにもスピードが速いため、U-235の原子核に遭遇しても通り過ぎて中に飛び込もうとはしない。速い中性子のスピードを落とす工夫が原子炉の中で必要になる。燃料と燃料の間に減速材をおき、その減速材の中を中性子が通過している間にスピードが落ちてくるのである。

 減速材には、重水素と酸素が結合してできた「重水」と、普通の水の「軽水」、それに炭素が主成分の「グラファイト」がある。世界で稼動しているほとんどの発電用原子炉で採用されている減速材は、「軽水」である。中性子とほぼ同じ質量の原子核が主成分の物質が、減速材に適している。例えば水が減速材の場合、中性子は水素原子核とビリヤードの玉突のように衝突を繰り返すことにより減速されるのである。

 濃縮度、燃料と減速材のサイズなど、すべて三次元で計算され、原子炉は緻密に設計されているのである。U-235原子核の核分裂を人間の思うままにコントロールして連鎖反応させ、莫大なエネルギーを利用する、これが原子炉の役割である。

(水口 哲)