バブル経済の破綻による長びく不況、加えて地球環境の保全をめざす省エネルギーの掛け声にもかかわらず、日本のエネルギー消費はふえ続けている。たしかに産業用消費は停滞気味だが、家庭用や生活関連の消費量は、確実に増えている。それとともに電化率、つまりエネルギーを電気として使用する率が高まっている。
その電気も、産業用の需要は伸び悩んでいるが、家庭用のエアコンや電気カーペット等の普及、ビルのオフィス・オートメーション(OA)化や空調需要の拡大で、生活関連需要は高い伸び率となっている。電力消費面で日本は産業大国から生活大国になりつつある。
それに東京一極集中の影響で、東京電力の伸びが際立っている。9つの電力会社の販売電力量に占める東京電力の割合は、昭和26年度に23.9%だったのが、平成3年度には33.8%と全国の3分の1を占めるに至った。今も3年間で1,000万kW(神奈川県の使用電力に相当)もふえている。しかも東京電力は、発電所の管内での立地が難しく、原子力発電所を東北電力管内に建設したり、緊急時に他の電力会社から融通してもらったり、ここにも東京一極集中の問題点が現れている。
電気が家庭でもっぱら電灯に使われていた時代は、消費のピークは夜の長い冬であったが、クーラーの普及とともにピークは夏に移った。1日、1月、1年のうち、最高に電気を使った量を最大電力といい、1年の最大電力は真夏8月の午後3時ごろ。ただし平成4年の9電力会社の最大電力は、異例の残暑が厳しかった9月4日の1億5,287万kW(これまでの最高)。
ところが最近、冬にも最大電力の大きい日が現われるようになった。高齢化の進展や女性の社会進出の活発化で、安全な電気暖房が着実に伸びてきたからだ。平成5年1月25日午後5時、東京電力の最大電力は4,520万kWと、冬期としてはこれまでの最高となった。寒くて暖房利用がふえたのと、皇太子妃内定や「貴・リエ」事件で、テレビ視聴率がぐんと上がったからだ。夏の最大電力が、暑さと高校野球が重なったときによく出るのと似ている。電力消費のピークが夏と冬に現われるようになったことを、電力業界では「ふたこぶラクダ型」と称している。
ところで電気は、貯蔵することが難しいから、需要のピークに合わせて発電所をつくっていかなければならない。それに最近は、最大電力と最小電力の差が広がる傾向にある。そうなると発電所が遊ぶ時間が多くなり、これは電力コストに響いてくる。だから夏のピーク時に工場を夏休みにしたり、電気使用が急減する深夜の料金を安くしたりして、消費の山をならす工夫が重要になっている。
電力会社は、コストの関係から、消費が減ると、石油や天然ガスの火力発電をやめるから、電力消費が1年のうちで最も落ちる正月2日には、原子力の比重がうんと高くなるという現象がみられる。
(大谷 健)