人間は毎日毎日、エネルギーを消費して生きている。それも昔は太陽の光と熱に頼り、米をつくのは水車、ご飯をたくのは山から拾ってきた薪、車は馬か人力、舟も人力か風まかせ。日が落ちて暗くなれば、なるべく早く寝た――いわば天然の金のかからないエネルギーに依存していた。
人間が文明生活を味わうようになり、太陽が沈んだ後は、ろうそく、燈油、ガス燈、電燈が照明した。動力は人力、水力、風力から木炭、石炭、電力に移った。これらの人工のエネルギーは獲得するのに金がかかるが、天候に関係なく大量に確保できる。近代文明は人工エネルギーによって支えられたといえる。
近代人のエネルギー消費の増加テンポは早まる一方となった。電力は、一次エネルギーの水力、石炭、石油、天然ガス、原子力を加工した、使いやすい代わりに、価格の高いエネルギーで、始めは夜間照明にしか使われず、それも一般の家庭は夕方から早朝までに限られていた。日本では太平洋戦争までは、電気を使うのは電灯以外では扇風機か電気こたつまで。冷蔵庫はまだ氷だった。だからその頃日本一の電気企業の名は、東京電燈だった。
それが戦後、東京電力に変わった。戦後の物資不足時代の中で、まず電熱器が普及した。そして経済復興に成功するや、人々は、三種の神器、つまり電気洗たく機、電気冷蔵庫、白黒テレビを争って買った。普及率が100%近くになると、高度成長の波に乗って、今度は3C、カー、クーラー、カラーテレビに飛びついた。これら6品目のうち5品目は電化製品で、残る一つの自動車もガソリンというエネルギーを多消費する耐久消費財である。
20年前、学生の一人暮らしの部屋にあるのは、電灯、電気スタンドの他は電気こたつ、電気ポット、ラジオぐらいだったが、今は電灯、電気スタンドは同じだが、電気冷蔵庫、ジャー炊飯器、電子レンジ、トースター、コーヒーメーカー、電気洗たく機、カラーテレビ、ヘアドライヤー、ステレオ、ルームエアコンがある。こんな調子で民生用エネルギー消費は産業用より高いテンポで伸びている。
石油危機の後、日本の家電会社は省エネ型をつくり、テレビの消費電力は59%に低下したが、人々は2台目のテレビを、しかも大型を買うようになったから、世帯当たり電力消費はかえってふえた。加えて空調、給湯、台所の改善、それに24時間都市が生まれてビルやホテルの照明、空調のエネルギー消費がふくらんだ。地球環境問題がやかましくなって、さすがに日本人の間にも、エネルギーの浪費を反省する意識が高まっているのだが、いざ毎日の生活となると、無意識のうちにどんどん電気もガスも使ってしまう。日本ばかりではない。先進国はもとより、開発途上国の人々も、かつての日本人が三種の神器を求めたように、エネルギーを消費する耐久消費財を欲しがっている。
(大谷 健)