GNPはGross National Productの略で、日本語で国民総生産という。一国が1年間に生産した財貨とサービスの総計を市場価格で表示したもの。平成元年度の実質国民総生産は388兆円(昭和60年価格で計算)である。
GNPの伸びが高いと景気がよく、逆に現在のソ連のようにGNPが前年より減ったりすると、国民の生活状態がひどい。だからどこの国の政治家もGNPを伸ばすことに精力を傾ける。
ところがGNPが伸びるとエネルギー消費も増える。両者の相関関係をエネルギー需要のGNP弾性値という。これはエネルギー需要の伸び率をGNPの伸び率で割って計算する。石油危機までは、日本に限らず、アメリカなども平均して1.0以上だった。つまり経済が1%伸びればエネルギー需要も1%増えたのである。
GNP弾性値1については、世界の人はだれも当然と思っていた。しかし第一次と第二次の石油危機で原油価格が暴騰し、つれて石炭、天然ガスなどエネルギー価格がそろって急騰した。人々はこまめに電灯を消すなどエネルギー節約に努めた。しかし、消費が減るとGNPも伸びなくなり、不況を招く。日本も第一次石油危機をモロにかぶった昭和49年度のGNPは、前年より0.4%減退した。
エネルギー価格が上昇すると、それを使った商品の価格も上昇する。価格が高くなれば売り上げが減る。したがってGNPも伸びない。高いエネルギー価格の下で、景気を良くし、GNPを伸ばす方法はないのか。
日本の産業界は、その方法をいち早くつかんだ。それはエネルギーを今までより効率的に使い、商品一単位当たりのエネルギー消費量を減らすことであった。そうなると製品価格はエネルギー価格高騰分をまるまるかぶらなくてすむから、お客に割安で提供できる。こうして日本の商品は内需、輸出とも好調に売り上げを伸ばしたのである。
また、産業構造も、エネルギー多消費の素材産業中心から、エネルギー消費の少ない加工組立型やソフト産業中心に転換した。言い替えれば、日本はエネルギー消費が増えなくても、GNPが伸びるという実験に成功したのである。
ところが昭和47年頃からまたGNP弾性値は、上昇し始めた。日本経済が石油危機を見事に乗り切ったことから、円高となり、輸入品、とりわけエネルギー物資が割安になってきたからである、円高差益還元ということで電気、ガス料金も引き下げられた。
安くなると節約意欲がなくなる。再びエネルギー消費が増えだしたのである。
しかし、今度は別の挑戦、つまり地球環境を守るためのエネルギー節約が迫られている。その場合も生活水準を落とさず、換言すればGNPの成長を維持しながら、エネルギー消費を抑制するための工夫が、産業界にも消費者にも望まれている。
(大谷 健)