かつて英語の「atomic」を「原子」と訳し、「nuclear 」の「核」と分離して訳していた。例えば、「atomic bomb」を「原子爆弾」、そして「nuclear weapon」を「核兵器」というようにである。ところが、平和利用の方は、どうも混同されて翻訳されてきたようだ。「nuclear reactor」を「核炉」とはいわず、「原子炉」と呼んでいるのは承知の通り。一方、「nuclear fuel」は「核燃料」と一般的に呼んでいるが、とくにわが国の電力業界では「原子燃料」と呼ぶようになった。「核」という言葉は「兵器」に結びつけられやすくイメージが悪い、というのが、「核燃料」から「原子燃料」に変えられた理由である。
「nuclear energy」つまり「核エネルギー」の利用技術は、「軍事利用」と「平和利用」との二面性をもって進められてきた。しかし少なくとも国民の理解をもって進めなければならない平和利用の方は、イメージの悪さが致命傷にもなりかねない。ところが両者の技術自体は、特に開発の初期の段階において、並行してその開発が進められてきた。
「核燃料サイクル」改め「原子燃料サイクル」の技術は、そこから取り出される濃縮ウランやプルトニウムが原子爆弾として使われなかったら、それらの平和利用における「原子燃料サイクル技術」の今日はない、と断言しても決して過言ではなかろう。
鉱山で掘り出されたウラン鉱石は製錬され、濃縮され、成型加工されて初めて原子炉の燃料となる。ここまでを「アップストリーム(上流)」と呼んでいる。
「ダウンストリーム(下流)」の方、つまり原子炉の中で使用された後の燃料だが、ボイラーの燃料、例えば石炭なら、ひとたび燃えつきると廃棄物になるだけだが、原子炉の燃料は、その使用済みでも減量しているとはいえ、捨て去るには忍び難いほどのウランが残っている。また、原子炉の中で作られたもう一つの原子燃料のプルトニウムも存在していて、使用済み燃料とはいえ一括廃棄物にはできないのである。
使用済み燃料を再処理して、再利用できるウランとプルトニウムを分離し、それらを濃縮や成型加工して、再び原子炉の燃料として戻されることから、「原子燃料サイクル」と呼んでいる。つまり原子燃料は、グルグル循環のリサイクルで、効率よくウランという地球資源を利用することができる仕組みになっているのである。
資源に乏しい日本としては、燃料が有効利用できるところにも、原子力発電採用の大きな魅力の一つになっている。したがってこのサイクルが、すべて国内で完結できるよう、その準備が着々と進められている。
青森県下北半島・六ヶ所村で進められている「原子燃料サイクル施設」がその中心で、「ウラン濃縮工場」「低レベル廃棄物貯蔵センター」それに「再処理工場」の3施設が順次完成する運びである。
(水口 哲)