20億年前に天然の原子炉があった

高濃縮、高含有量のウラン鉱床に地下水で臨界


 ウラン-235を燃料にした核分裂連鎖反応は、人間が作った原子炉の中か、核爆発で起こるものとばかり思っていたが、なんと20億年前の地球上で天然の原子炉が存在していたというから驚き。中央アフリカは、ガボン共和国のオクロ地区にあるウラン鉱山で、核分裂連鎖反応が自然に起こっていた跡を発見した、とフランス原子力庁(CEA)が、1972年発表し、世界の原子力関係者をびっくりさせた。

 この20億年前にあった天然の原子炉では、100万kWクラスの原子炉5基が、1年間の運転で出すエネルギーに匹敵する量を、数十万年かけてゆっくり出し続けた、というのだ。

 ウランには、自然界にウラン-238とウラン-235の2種類の同位元素が、それぞれ99.3%と0.7%存在している。ウラン-235は45億年の半減期を持っているので、地球誕生時に今の2倍ほどあった。いっぽう軽水炉の燃料になるウラン-235の半減期は7億年で、すでに半減期を6〜7回繰り返したことになり、今の量の2の6〜7乗倍、つまり64〜128倍ほどの量だったことになる。

 オクロの天然原子炉では、ウラン-238は半半減期、つまり4分の1ほど減って、地球誕生時の約75%、ウラン-235は3半減期ほどで12%の量になっていたと推定される。したがって、当時のウラン-235の濃縮度は、現在の原子燃料とほぼ同じ約3%以上と計算され、水が流れ込んでくれば、核分裂連鎖反応が維持できる状況だったのである。

 ウラン-235に核分裂の性質があることは、ドイツのオット・ハーンらが1938年に見つけている。ウラン-235に中性子が当たると、別の原子に分かれ、その時膨大なエネルギーが放出されるのだ。ハーンらの発見を聞いた、当時すでにアメリカへ移住していたアインシュタインが、ルーズベルト大統領に、ドイツの原爆製造を心配して、原爆の製造を勧める手紙を出したのは有名な話しだ。

 ウラン-235を平和的に利用する発電用原子炉ができたのは、1954年のソ連オブニンスク原子力発電所(5000kW)だ。ウラン-235の核分裂発見の14年後のことだった。

 ウラン元素は、現在、地球上に存在する最も重い元素で原子番号は92。つまり、ウラン-235は、92個の陽子と143個の中性子でできているのだ。原子は、外側に高速で回る電子、陽子と中性子で構成される原子核があり、核内ではプラスの電気を持つ陽子と陽子が反発し合っている。それを湯川秀樹博士(故人)が予言し、発見されたパイ中間子がツナギの役目をして結びつけている。

 つまり、陽子の数が多いほど反発力が強まり結びつきが弱くなる。ウラン-235は地上で最も結びつきの弱い元素である。中性子が当たるともろくも分裂し、その際膨大なエネルギーを放出する。物質の持つ核分裂という神秘を探り当てた人間が、それをエネルギー源として利用できるのは、たぐいなき天の配剤かも知れない。

                                           (牧野 薫)