米国版(原版)の序文

                           アメリカ原子力学会

 「原子力とその周辺・・質問と回答」は最初1973年に出版され、その後1976年に改訂されたものです。しかし、アメリカのエネルギ−事情は年々大きく変動しているため、1980年代の諸事情に合わせて再度改訂する必要が出てきました。

 この本の今度の新改訂編集では、多くの市民の方々のご要望に応えて詳細な情報を盛り込み、それまで1冊にまとめられていたものを4分冊にして順次発行しております。新改訂版4分冊の最初の本「放射線」は1980年に出版され、その最後の第4分冊目の本「代替エネルギー」は1981年に出版されました。「核燃料と廃棄物」という題名のこの本はBook2としております。BooK3は「安全とリスク」と題して現在編集準備中です。

核分裂反応をコントロールしながら大量のエネルギーを生産するということは、人類の長い歴史という観点からは比較的新しいものといえましょう。その意味からすればそれはまだまだ進展を続けている技術といえるかも知れません。電気をつくり出すための原子力の利用技術は、1950年代と60年代を通じて開発されてきましたが、それと同時に、核燃料サイクルの技術も並行して開発されてきたのです。このサイクルは、燃料をつくるための採鉱と濃縮から始まり、処分するための廃棄物の分離や未使用ウランを既存の原子炉に戻すリサイクル、副産物として生れたプルトニウムを既存のあるいは新型の増殖炉で使うリサイクルといった使用済み燃料の処理で終わります。この燃料サイクルの確立は、輸送と廃棄物処理のところでの安全・保障両面の開発をも引き出したのです。

 1950年代と60年代は、核兵器拡散の危機に直面した最初の時代でもありました。核兵器保有国としてソ連がアメリカに続いて名乗りをあげ、イギリス、中国、フランスがそれらに続きました。そして、その同じ時期に、世界の国々は、人びとの平和的生活の安定と発展を図るため、人口に基づき増大するエネルギー需要を満たすための原子力の利用を欲するようになりました。この外見的矛盾は、原子力平和利用計画と核拡散防止条約によって解決されました。これら二つのプログラムは、1960年代にはよく機能しましたが、1970年代の初期、インドが研究用原子炉でつくったプルトニウムを使って核爆弾を作り爆発実験をするに至り、事態は再度おかしくなりました。核兵器と原子力平和利用との矛盾は、アメリカ国内の核燃料サイクルの開発を一時停止させ、その議論は再燃しました。国際的グループである国際核燃料サイクル評価グループ(INFCE)の3年にわたる検討の後、従来の原子力発電とプルトニウムを原料とする増殖炉は、核拡散の可能性を高めることにはならないという結論を引き出しました。

 この本が出版される頃には、アメリカ連邦政府の政策により核燃料サイクルの開発を再開させることになっています。しかし、この政策を実施するに当たって、多くの重要な政策的障害を克服する必要があります。しかし、それは時がくれば解決することができると確信します。

この本の執筆に当たって、アメリカ原子力学会(ANS)の会員である多くの専門家達はもとより、ANSの核燃料サイクルと廃棄物処理問題研究会のメンバーの方々に、多大なご協力をいただきました。私たちは、そういった多くの方々のご協力に対し感謝の意を表します。また、このQ&Aの最初の2版をつくられたロバート・J・キャンパナとシドニー・ランガーの業績に対し敬意を表します。そして、出版に際して原稿の整理等でお手伝いいただいたゲイラ・ニューメイヤーとロレッタ・パラギーには特に感謝します。

 より多くの情報を必要とされる読者に対し、多くの参考文献を掲載しました。ここに掲載した文献は、本文で引用した文献だけではなく、追加情報源として適切と思われる文献も含まれています。(日本版では、この原文の文献リストは割愛し、日本国内で容易に入手できる図書に限定して掲載しました。)

   ウォルター・メイヤー
ウィリアム・H・ミラー
                      サダーシャン・K・ロヤルカ